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最高裁判所第一小法廷 昭和27年(オ)451号 判決 1954年12月16日

主文

本件上告を棄却する。

補助参加によつて生じた訴訟費用は補助参加人の負担とする。

理由

論旨は、農業委員会法八条一項において「一反歩以上の農地につき耕作の業務を営む者」とあるのは、選挙人名簿に登載せられる時において、現実に所定の農地を耕作している者たるを以つて足り、法律上耕作をなしうる権利を有するか否かは問題とすべきでないと主張するが、農業委員の選挙権、被選挙権は、公法上の重要な権利であつて、これを享有する資格者として、たとえ事実上所定の農地につき耕作の業務を営んでいるものであつても、現にその耕作が法令に違反し法律上その権原なきものまで包含するものと解することは許されないと云わなければならない。原判旨は補助参加人及び同人妻は、事実上判示農地につき耕作の業務を営んではおるが、該農地は自作農創設特別措置法により買収され、訴外熱田浩に売渡されたものであつて、これによつて補助参加人等の従来有していた農地の耕作権は消滅し(同法二二条一項)、また、爾後右熱田は補助参加人等に対し右農地を引続き耕作することを許容したけれども、農地調整法四条による知事の許可を受けたことは認められないのであるから、右当事者間に該農地につき賃貸借契約の成立したものということはできない。従つて、他に特段の事由につき主張立証なき本件では同人等は右農地につき法律上耕作をなしうる権利を有する者ではないとなさざるを得ない。そして、同人等の耕作している農地の面積から右農地の面積を控除すれば同人等は僅かに五畝一四歩を耕作しているに過ぎないのであるから、同人等は農業委員会法八条一項にいわゆる一反歩以上の農地につき耕作の業務を営むものに該当しないと判示しているのである。この原判旨は正当であつて所論は採用することができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九四条後段に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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